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教師のボランティアセミナー

総合的な学習の時間に向けた実践プログラム・小学校
「 障害がある人を理解しよう 」

プログラム実践・提案者
 竜王町立竜王南小学校・中巨摩地区ことばの教室 教諭 内藤和彦

 聴覚に障害がある子どもが周囲とコミュニケーションをスムースに図れない場合、障害がある子どもの側の能力や態度を問題として、まず最初に基礎的能力を身につけさせることに指導・援助の重点が置かれていた。もちろん聴覚に障害がある子どもに対して正しい発音を身につけさせたり、語彙を増やしたり、音やことばを聞き分けたりする言語指導や聴能学習は欠かすことはできない。

 しかし、コミュニケーションは、伝え手および受け手の相互の関係によって成り立つものである。受け手としては、伝え手の話したいこと、訴えたいこと、聞いてほしいことを理解しようと耳を傾け心を働かせる。また伝え手は、相手に分かってもらおうと、思いを込め、相手が分かりやすいように一生懸命話そうとする。こうした「伝えたい、話したい、聞きたい」といった感情を育むことが日常生活で生きて働くことばを増やし、豊かなコミュニケーションを築くことになるのではないだろうか。コミュニケーションがスムースに図れない理由を、「障害がある子どもの側だけの問題」としてとらえるのではなく、「子どもとそのかかわり手双方の問題」という視点からもとらえた指導・援助が必要であると考える

 そこで今回の実践事例は、通級指導教室(ことばの教室)担当者が聴覚障害児への指導と並行して、通級児が在籍する学級に出向き、障害の理解に関する指導・援助を行ったものである。学級の子ども達や担任は、障害の状態や通級指導教室のことをより深く理解し、通級児(聴覚障害児)に対してもより良いかかわり方を身につけることを目標にした指導・援助事例である。

 従来の通級指導教室の指導・援助は、「ことばを聴き取る」・「ことばを話す」・「ことばを覚える」ことに主眼をおいた意図的な「ことばの学習」であった。こうした聴覚障害児本人への指導・援助に加え、かかわり手側への指導・援助を行うことで、より豊かなコミュニケーションが営まれるのではないだろうかと考える。

聴覚障害児が在籍する学級への指導・援助案

1 指導・援助の目標

(1)体験を通して難聴(聞こえにくい)の状態および補聴器について理解を深める。
(2)難聴の人に伝えたり、話したりするときに気をつけることを理解する。



2 第1次の学習

(1)ねらい
 体験を通して難聴(聞こえにくい)の状態および補聴器について理解を深める。
(2)展開

指導・
援助内容
◇これからの学習について説明する。

◇聞こえの仕組みと難聴について理解を深める。
 ・聞こえの仕組みについて,仕組み図を使い説明する。

◇聞こえにくさを体験 することで難聴の状態 を理解する。
 ・難聴の状態の聞こえの仕組み図を使い視覚からも理解でるようにする。
 ・難聴の状態の聞こえ方シミュレーションビデオを視聴する。
 ・音量を増しても歪みが生まれはっきりしないことを知る。

◇聞こえにくいため,どのような工夫をしているかを考える。

◇補聴器からの音を体 験する。
 ・補聴器の扱い方を知る
 ・グループ毎に自由に体験する。
 ・代表者の話しを聞き取る。
 ・音楽をかけた状態で代表者の話しを聞き取る。

◇健聴と難聴の状態を仕組み図を使って確認する

◇確認すること
 ・補聴器は音を大きくはするが,全ての音を理解できるわけではない。
 ・まわりが静かなときには聞き取りやすいが,騒がしいときには聞き取りにくい。
 ・補聴器さえ着けていれば全ての音がわかるというわけではない。

◇次時の内容を説明する
 ・読話についての学習
学習活動 ◇これからの学習を知る。

◇聞こえるとはどういうことなのかを理解する。

◇聞こえにくい状態を体験する。
 ・通常の状態のテレビと音声を極端に小さくした状態のテレビを見比べ感想を発表する
 ・難聴の状態のシミュレーションビデオを視聴する。
 ・難聴の状態を現した仕組み図を見て,視覚的にも理解する。
 ・両方の学習を通して難聴の状態を体験し,不自由な状態を知る。
 ・なぜ歪みが起きるのかを仕組み図を見て理解する。

◇聞き取りやすくするための手立てについて考え発表する
 ・補聴器をつける。
 ・口の形を良く見て聞く。
 ・まわりが静かにする。

◇補聴器からの音を聞く。
 ・グループ毎に自由に話をしながら聞き合う。
 ・静かにして一人の話しを聞く
 ・音楽をかけて一人の話しを聞く。

◇聞こえ方をまとめる。
 ・感想を発表する。
 ・仕組み図を見ながら聞こえ方を確認する。

◇難聴の状態のシミュレーションビデオを視聴して理解を深める。
 ・補聴器のほかに話し声を理解するために工夫や努力していることを考える。

◇次時の学習の見通しを持つ
指導・
援助上の
留意点
 ・興味関心が沸くよう学習内容を示す。
 ・聞こえの仕組み図を用意する。
 ・映像だけのアニメを見せ,映像だけでは分かりにくいことを体験する。
 ・音声の大切さに気づかせる。
 ・難聴児はいつもこうした状態で生活していることに気づかせる。
 ・難聴の状態を現す仕組み図も用意し説明することで,視覚的に捉えられるようにして理解しやすくする。
 ・難聴児とかかわる中で気づいたことを発表できるようにする。
 ・補聴器の説明図を用意し,扱い方を理解させる。
 ・補聴器を10〜12個用意する。
 ・雑音が多く聞き取りにくいこと,音がとても大きくなり小さな音でもうるさいこと,音の遠近感がなく聞き取りにくいことなどを体験させる。

◇健聴と難聴の状態を仕組み図や児童の感想をもとにまとめる。
 ・難聴の状態のシミュレーションビデオの視聴もして理解を深めさせる。
 ・確認させることを模造紙に書いて提示する。
 ・補聴器以外に工夫したり,努力したりしていることを考えさせ,次時の学習につなげる。
 ・次時の学習に期待を持たせる。

3 第2次の学習

(1)ねらい
 難聴の人に伝えたり、話したりするときに気をつけることを理解する。
(2)展開

指導・
援助内容
◇本時の学習の説明をする

◇聞き取りゲームを提案する。
 ・体験を通して分かりやすい話し方に気づくようにする
 ・難聴児と話をするときどんな事に気をつけているか意見を出し合うようにする。
 ・難聴児本人からもいつもどんなことに気をつけているのか意見を聞く。

◇難聴の人に伝えたり、話したりするときに気をつけることをまとめる。

◇コミュニケーションは話し手と聞き手がお互いに分かり合おうと努力することが大切であることに気づくようにする。
学習活動 ◇本時の学習内容を知る。

◇シミュレーションビデオを見なが聞き取りをする。
 ・口を隠して単音、単語を聞き取る。
 ・口を見ながら単音、単語を聞き取る。
 ・聞き取った結果をもとに、両者の違いについて感想を出し合う。

口の動きを見ると分かり易い。
      ↓
口を見せて話すと分かり易い(伝わりやすい)
 ・少し早口で話す質問を聞き取る。
 ・少しゆっくり話す質問を聞き取る。
 ・聞き取った結果をもとに、両者の違いについて感想を出し合う。
 少しゆっくり話してもらうと分かり易い。
      ↓
 少しゆっくり話すと分かり易い。

◇シミュレーションビデオによる聞き取りの結果と今までの経験から難聴の人に伝えたり、話したりするときに気をつけることをまとめる。
指導・
援助上の
留意点
・難聴の状態を再現したシミュレーションビデオを見て前時の復習をする。
・前時のビデオの続きを見せる
・「言葉聞き取りプリント」を用意し、聞き取ったことばを記入する。
・口を見ながら聞いたときと口を隠したときでは理解度が違うことを理解させる。
・難聴児の聞き取りの結果を知らせ、自分達よりも難聴児の方が正しく聞き取っていることに気づかせ、口の動きを見ることの大切さを知る。
・少し早口のとき、少しゆっくりのとき、それぞれの理解度の違いに気づかせる。
・児童の感想をもとに分かりやすい話し方をまとめる。
・聞き取りの結果のほか、日常生活の経験からも意見を出させる。
・難聴児本人からも意見を聞く
・出された意見をもとにまとめる。
・要点は模造紙に記入しておき難聴児にもすぐ分かるようにしておく。

 大切なこと
 ・正面から話しかける
 ・口元を見せて話す
 ・少し大きな声で話す
 ・少しゆっくり話す
※聞こえの仕組み図、難聴の状態のシミュレーションビデオは中巨摩地区ことばの教室にあります。

4 難聴児が在籍する学級への指導・援助を通して

(1)指導・援助による学級児童の変容

・口を見せて少しゆっくり話すなど、分かりやすく話そうとする意欲が高まった。
・難聴児を励ましたり、しっかり聞き取ろうとしたりする態度が見られるようになった。
・自分達を取り巻く音(環境音)への意識が高くなった。



(2)指導・援助による難聴児の変容

・話し手を良く見てしっかり聞き取ろうとする意欲が高まった。
・自分の発音に気をつけて話す、皆の方を向いて話す、話し方の学習を意欲的に行うなど分かりやすく話そうとする態度が今まで以上に見られるようになった。

 このように、難聴児が在籍する学級集団へ指導・援助を行うことは、障害の状態を正しく理解することになると共に、難聴児と学級集団の双方に変容をもたらし、分かり合おうとする気持ちを育むことになる。このような関係が豊かなコミュニケーションを築く上で大切な要素になるのではないかと考える。

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補聴器をしている友だちがいる学級のみなさんへ

 みなさんの学級には耳が聞こえにくいために補聴器をつけている友だちがいますね。
これから、その友だちのために注意してほしいことを説明します。

1 耳が聞こえにくいということ

みなさんのほとんどの人は「自分はいい耳だ」と思っていると思います。でも、
・病気をする
(お母さんのお腹の中で風疹にかかる、中耳炎になる、かぜをひくなど)
・年をとる
 などで、耳は聞こえにくくなります。補聴器をつけるほどではないけれど、少し聞こえにくいという人は100人に2人くらいはいます。これからお願いすることは、そういう友だちのためにもなります。

▽耳が聞こえにくくなると、

 先生や友だちの声がはっきり分からず、かんちがいをしたり、勉強が分かりにくくなったりすることがあります。
 音がはっきり聞こえないために、発音もはっきりしなくなります。
 人とうまくつきあえないことで不安になることもあります。
 そこで、目の悪い人がメガネをかけるように、聞こえにくい人は補聴器をつけます。(でもメガネをかければはっきり見えるようになりますが、補聴器をつけてもはっきり聞こえるようにはなりません)

<やってみましょう>(爪をしっかり切ってからね)

・耳にしっかり手を入れ、その手を小刻みに動かしながら、先生や友だちの言っていることを聞いてみましょう。
 補聴器をつけている人は、それだけではうまく聞こえるようになるのではなく、音がゆがんでしまって今やったような聞こえ方になる人が多いのです。



2 こんなことに気をつけてください

・先生や友だちが話すとき、「静かに聞く」ようにしましょう。

補聴器はどんな音でも大きくするので、うるさい中では人の話が分かりにくくなります。
 ・相手の目を見て、顔と口をはっきり見せて話すようにしましょう。
 ・表情豊かに話しましょう。
  音だけでははっきり分からなくても、口の動きや表情で分かることが増えます。
 ・あなたの言っていることが分かりにくいようなら、「お・は・よ・う」と一語一語を区切らないで、少しゆっくりした話し方で話してください。
 ・それでも伝わらないときには、字を書いて伝えることもいい方法です。
 ・人の言っていることが十分わからないと、仲間はずれになったような気がしたり、悪口を言われているようで不安になったりします。面倒でも、表情や態度やことばで友達が表現するまで、あなたが言いたいことが伝わるように努力してください。
 ・非常ベルや大切な放送があっても気がついていない時には教えてあげてください。
 ・話しの中味をしっかり聞いてください。

 友だちの発音がはっきりしないときでも、周囲の様子や今していることから判断できることが多いものです。また、話しの中味を分かろうとして、一生懸命に聞いてくれる友だちがいることは、とてもうれしいものです。



3補聴器について注意してほしいこと

 ・ぶつけたり、ぬらしたりしないように注意してください。
 小さな機械の中に、校内放送のマイクとアンプ、スピーカーが入っているようなものです。とても敏感でこわれやすい機械です。10万円以上もする機械でもあります。まわりの人も大切にするよう心がけてください。
 ・補聴器のそばで大きな音をさせないでください。

 簡単なようですが、いつも気をつけることは難しいと思います。それでも補聴器をつけている友だちのために、思いやりの心をはたらかせることは、学級全員のためにもなることです。きっといい学級をつくっていけると思います。
よろしくお願いします。

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